カチィッ!
『ルォォォォォ……』
龍はその音で目覚めたのか、私の姿を見つけると、更に谷の奥深くへと逃げていった。
それ目掛けて鉄砲を撃ったが、龍には当たらなく、銃声だけが何度も谷を木霊した……。
更に、一日、二日、三日……
一週間、二週間、三週間……
一月、二月、三月、半年……
そろそろ龍を討つために旅に出てから一年が経つとしていた。
未だに龍を討つことはできないでいる。
不思議な事に、龍は私を襲おうとはせずに逃げる一方だった。
時には谷の奥に逃げ。時には私の頭上を飛び越えて逃げ。
この半年近く、私は谷の中で龍と追いかけっこをしていた。だがこれは遊びではない。私は龍を殺そうとし、龍は私から逃げる。
鉄砲の弾は既に切れているため、私は大業物の正国だけで龍と戦う事になっている。
それでも、逃げるだけの龍に傷を負わせることはできた。
この谷に来て半年の間に、私は龍を討つ事ができるか反対に疑問になっていた。
この一ヶ月くらいで、今まで以上に龍にかなりの手傷を負わせた。そのために龍の動きが段々と散漫になってきている。
又、ここの地理にもだいぶ慣れた。龍に不意を突いて攻撃するにはどうすればいいのか。龍の通れない回り道はどこにあるのか。それが分かってきたために、龍に追いつく時間がかからなくなってきた。
龍にとどめをさせるのはそう遠くない様な気がする。
だが、いざ龍にとどめを刺せるという時になって、私は躊躇いなく龍を殺すことができるだろうか?
龍は逃げているだけだ。弥一の仇ではあるが、逃げるだけの者を私は討つ事ができるだろうか?
そう考えるようになってきていた。
だが、数日経つと、遂に龍にとどめをさす絶好の機会が訪れた……
龍が私の接近に気付かずにぐったりと横たわっていた。数日前に私の付けた傷からは、未だに微かな血が流れ出ている。
龍の数歩前まで歩いていっても、全く微動だにせずにいる。息をしているのだけは感じられた。
どうするか……
刀を強く握り締め、私は龍の目の前で立ち尽くしていた。
そのまま、一刻が過ぎた。
私は遂に、龍に刀を振り下ろす決心をした。龍は寝息のように穏やかな息吹を発している。
「弥一の仇、今とらせてもらう……」
呟き、私は龍の眉間へと刀を突き立てた……。
オォォォォォォ……
負傷していない目を見開き、龍は大きく一度鳴くと、そのまま動かなくなった。
「…………」
半刻ほどそのままの状態でいただろうか。私は刀を引き抜くと、呆然と自分の手、その手に握られる刀、そこから滴る…血、それらを順に眺めた。まるで他人が人を殺した現場を見るような目でそれらを順に見ていった。
「…………」
カ…ランッ……
刀が手から滑り落ちた。地面に大きな音を立てて転がる刀を視界の端におさめながら、私は地面に膝を付いた。
「あ……」
自分でも間の抜けた声だったと思う。
それだけ呟くと、私はもう一度自分の手に視線を移した。
それは既に自分の知っている自分の手ではなかった。碧燐に包まれており、形も人間のそれではない。
『龍を殺した奴は不死になる……』
村を出るときに誰かが話していた言葉が不意に思い出された。
「不死になるって…龍になるって事なの?」
呆然と自分の腕を眺めているうちに、私の姿はどんどんと龍の姿になっていった。
「あぁ……」
今頃になって気付いた。龍を殺したものが龍になる。なら、私の一族が龍を討伐しに行って帰って来なかったのは龍に殺されたからじゃなくて、龍を殺して龍になったからなのだと。
この龍が私を襲ってこなかったのは、最後に龍を討ちに行った者――弥一だったからなんだ……。
何だろ…意識が薄れていく……
そうか、龍になると自分の意識もなくなるんだ……
でも、それでも家族や愛する人を襲う事はできない……
だから弥一は多くの人を襲いながらも私を襲わなかったんだ……
でも、私には愛する人も家族もこの世にはいない……
じゃぁ、私はずっと開放される日なんてないんだ……
弥一の所に逝ける日なんてないんだ……
だから私の一族が龍の一族と呼ばれているんだ……
酷いよ…私だけずっと一人ぼっちだなんて……
……弥一……
あとがき
多くの方がお初です。管理人その1(?)の楓です。
以前開いてた私のHPに来て下さっていた方は、お久しぶりです。
あとがき・・・何を書けばいいんだろ。
とりあえず、これを書いたのは本当は数年前だったりします(ぉ
前のHPに載せていたものをそのままもってきました(ぉぃ
ですから、今更何か書けといわれても・・・。
まぁ、そんなわけで今までに読んだことのある人は、ごめんなさい。
これはあとがきじゃなくて懺悔だって?
ニホンゴムズカシイ・・・
まだまだ精進しますので、生ぬるい目で見てやってください。
桜月楓
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