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ブロリー・ブロッコリー



 ファミレスでメシ食ってたら、突然ブロッコリーが話しかけてきた。
 いや、ブロッコリーみたいな頭の友達がいる訳じゃなくて。
 うん、ブロッコリーってアダ名の友達がいる訳でもないよ。
 ストレートな意味に野菜のブロッコリー。あれがしゃべってるんだ。
「おい。おいって」
 ほら、今もドスのきいた声で呼びかけてきてる。
 野菜が話しかけてくるなんて超常現象だなぁ。
「おい、シカトすんなよ。お前だよお前」
 しゃべってるからって顔がある訳じゃない。
 どこまでも無機質にブロッコリー。いや、ブロッコリーは有機質か。うん、どうでもいい。
 とにかく、顔がないから口もない。
 え?どこから声を出してるのかって?そんなん僕が聞きたい。
 とりあえずイメージしやすいように説明すると、そうだなぁ……
 うん、アレかな。小学生が描くマンガのフキダシ。
 アレって口とフキダシが密着してるじゃん。あんな感じよ。イメージできる?
「……おい、お前なんでオレを残すんだよ」
 呼びかける事を無駄だとさとったのか、ブロッコリーが用件を言う。
 よしてくれ。まだ僕はブロッコリーがしゃべる事への混乱を整理できてないんだ。
「早く食えよ。ここ結構熱いんだよ」
 鉄板の上で不満をつのらせる。
 ちなみに鉄板にはハンバーグがあったけど、既に食べ終わってブロッコリーだけが残ってる。
 うん、僕はブロッコリーが嫌いなんだ。
「お前さ、オレが今どんな気持ちでココにいるか分かってるか?」
 なんか説得にかかってきてる。
 言われてみて、小学生のときだかに母さんが言ってた事を思い出した。
「野菜はね、頑張って育って、それなのにいきなり出荷されて、そして売られて。
 わかる?食べられるために生まれた訳じゃないんだよ。
 だからね。せめてもの感謝のしるしに、残さず食べるのが礼儀ってもんだよ」
 当時は野菜に心なんてある訳ないし、親の勝手な言い分だと思ってた。
 でも今なら分かった気がするなぁ。仲間外れはつらいよね。
 でもさ、問屋に売られるから出荷されてるんだよね。で、小売業者で僕ら一般人の手に渡る訳じゃん。
 だから『売られて、出荷されて、そしてまた売られて』が正しいと思うんだ。
 あーいや、それだとなんか話長くて変だな。名言はコンパクトなほうがいいし、やっぱ母さん正しいかも。
「おう、考えはまとまったか?」
 僕がどうでもいい事を考えながら、すごい顔で困ってたから心配されちゃったよ。
「はやく食ってくれ。実は限界近いんだ」
 って言われてもなぁ……
 ウダウダしてる僕を見て、ブロッコリーはため息をついた。どうやってだよ。
「炎天下で育ち、熱湯でボイルされ、今は灼熱の鉄板。そして末路は焼却炉か?おいおい、熱い人生だな」
 くそ、ブロッコリーのくせに知ったふうな事を言いやがる。
 食えばいいんだろ、食えばよ。
「おりゃぁ」
 思い切ってブロッコリーを口に入れた。
 噛んで噛んで噛む。
「そうだ……それでいい」
 ブロッコリーが僕の口の中で満足してる。気味が悪いからしゃべるな。
 噛む、噛む、噛む。
「うあ、やっぱダメだ」
 噛みすぎて嫌いな味が口の中を占拠してしまった。
 僕は慌てながらナプキンを五枚ほどとり、ブロッコリーを吐き出した。
「ぐお……な……なぶり殺しか……」
 もはや原型をとどめていないブロッコリーが苦しそうに言う。
 割と見たくない光景だったからナプキンをくるんで視界から消した。
「お……おのれ……」
 ナプキンの中から声がする。
 少し気の毒に思ったけど、僕には再びあの味を我慢する気はなかった。
 うーん、あんな姿にしてしまうくらいなら五体満足のまま焼却されたほうがよかったかもしれないね。
「食え……ひとおもいに食ってくれ……」
 ブロッコリー的には『食え』が『殺せ』って意味なんだろうね。うん。
 とはいえ、さっき説明したように食べる気はもうない。
 第一、ナプキンにくるんだもんを食べるなんて普通やらないじゃん?それは紙味だよ。
「ごめん……」
 僕は小さくつぶやいて席を立ち、伝票を取り上げてレジへ向かった。
 やっぱり嫌いなものは嫌いだ。


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