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灰色の雨音
ぽつぽつと降り始めた雨はすぐにザーと音を立てて地面を黒く染め上げた。
カサは持っていなかった。もしかしたら、彼が来てくれるかもしれない。そんな淡い期待を持っていたから。
雨に濡れて制服が体に張りつく。髪が視界を奪うが、気にもなれない。
濡れた白いブラウスとチェックのスカート。黒く染め上げられた世界がわたしの全て。
「バカ……」
もうこんなに濡れてしまえば一緒だろう。電柱に背中を預けた。
足元に出来た水溜りを蹴り上げる。一瞬跳ねた水も、別の水溜りの中に消えていく。
思い出しただけで涙が零れて来た。
先輩は後半年で受験。今が一番忙しいの分かっていたのに……なんで待てなかったんだろう、わたし。
優しく微笑んでいた先輩の顔がチラリと脳裏に映る。あの笑顔をもう見られないかも知れないと思うと、嗚咽まで洩れてきた。
会いたいけど会いたくない……会うのが怖い。
「何やってるんだろう」
自虐的に呟いても、返って来る答えはない。ないはず――
「何やっていてもいいけどな、風邪ひくぞ」
そっとわたしの世界にその人は入り込んできた。持っていた灰色のカサの中にわたしをそっと入れてくれる。
顔をあげた。わたしの瞳に映るのは灰色の世界と苦笑いした――先輩。
直ぐにわたしは顔を伏せてしまった。見せる顔がない。
先輩はそんな私を見てどう思うかな。嫌な奴かな、わたし。
折角来てくれたのに、何でこんな反応返しちゃったんだろう。まだ甘えているのかな。
チクリ胸が痛む。
「悪かったな…おまえが俺の事をあんなふうに思っているなんて、知らなかった……」
「……ううん」
先輩は震える手でわたしの顔をそっと上向かせた。視線が一瞬だけ絡まる。
「わたしで…いいんですか?」
「あぁ……」
心臓がトクトクと音を立てているのが感じられた。
――される、そんな予感があったから。そっと目を閉じる。
「――――」
しばらくそのままでいたが、やがてそっと離れる。
私はまた顔を伏せてしまった。今度は理由が違う。こんなに顔が火照ったのなんて生まれた初めてだ。
消え入りそうな声で呟く。
「……ありがとう」
「それは俺のセリフだよ」
自分が濡れるのも構わず、優しいぬくもりがわたしを包み込んでくれる。
「今日はもう行くね。これから予備校があるんだ」
「うん」
そう言うと、カサをわたしの手に握らせて先輩は雨の中を駆けて行った。
カサがあっても私は濡れたまま……。でももうこれ以上濡れることは無いね?
――ちょっと微笑んで見せた。
あとがき――
こいつを読んでみなさんどんなイメージを持ってくれたでしょう。どんな情景を頭に浮べてくれたでしょう。
とりあえず、イメージが浮かばなかったなら…ちょっと残念です。いやほら、だってまぁ――下の説明通り!
とりあえず、浮かんだイメージがあれば幸いです。
それが私の思っているイメージと一緒なら、なお幸いです。
今回、私がこれを書くにいたって、自分なりの目標を立てました。
1:読み手が出来るだけ同じ世界(イメージ)を心の中にでも描写してもらえるようにする。
2:説明だらけ、会話だらけの読みにくい文章にしない。
3:主語が分かり難い文章は書かないように気を付ける。
4:登場人物がこの文章以前と以後どういう状況にあったか、あるのか、それを読み手が想像してくれる文章にする。
別に上のようにやらなければいけないという事ではないと思いますが、今回これを特に注意して書いてみました。全部出来たというわけでは無いけど……。
無意識に普段からやっている事かもしれないけど、いざそれを規定して注意しながら書くと…かなり苦戦しましたね。いや、普段から文章書くのに苦戦していますけど……。
まぁ、とりあえず次は今回よりも上手く書けるようにします。
「あとがき」が苦手な楓でした。
2004年7月13日 桜月楓
超短編小説
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