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白い空/青い部屋
『決勝戦九回裏、同点のランナーを三塁において、バッター四番の賀屋君』
「この相手押さえれば、ちえのお兄ちゃんの優勝だよね!」
妙にはしゃぐ友達の言葉は、耳に入っても理解できない。私はただ静かに雑音雑じりのテレビを見つめた。部屋の隅にある勉強机の上にぽつんと置かれた、古いテレビ。
テレビの中の世界には、白い私の部屋と一緒の色が空のどこにもない。まさに晴天。テレビの中から、大声援が聞こえる。
そういえば、つい数分前まで騒がしく叫んでいた蝉の声も、なぜか聞こえてこない。
ふと気になって、そっと開け放たれた窓の向こうを見た。
晴れ。でも、ちょっと雲もある。でも、晴れている。こんなに晴れているのは久々じゃないかな?
「ちえ! ちえのお兄ちゃん投げるよ!」
友達の声で、そっと視線をテレビに戻した。ちょうどボールが画面の真ん中に突き刺さるところだった。
『ボール!』
審判の声と同時に、テレビ画面の右端に緑の丸が現れる。
「あー、おしい」
「……うん」
悔しそうに私の座るベッドをバンバンと友達が叩く。
私に代わって兄を応援してくれる友達に心の中で感謝しつつ、それにそっと頷いて応える。
そのまま試合は進み、ボールが二つ、三つとたまっていった。兄の周りにみんなが集まって話し合いを始める。
「うー、後ちょっとなのにねー」
友達の言葉に生返事で頷き、何気なしに外を見る。先程まで晴れていたのに、まるでテレビの場面に合わせているように遠くの方で入道雲が出来始めていた。
キュッとパジャマの胸元を握り締める。
『大丈夫…きっと大丈夫』
何度もそう胸の中で唱えて、テレビへと視線を戻した。
兄の許からみんなが離れ、兄一人がテレビに映し出される。額から流れ落ちる汗を拭い、ボールを構えた。
放たれたボールが、キャッチャーに届く前に掻き消えた。そう思ったのは幻覚か、ボールを画面が追って行く。
「あぁ!」
友達から悲鳴に近い声が漏れた。高く上がったボールは、グングンと伸びて行き。
『あ……』
二人同時に、呆然とした声を上げてしまった。固まったように動けなくなる。
プツン……と言う音を残して、テレビ画面が消えてしまったのだ。
「………………」
ミィィィーン! と、突然外で蝉が鳴き出した声が大きく聞こえる。
「止まっちゃった…ね」
「……うん」
テレビに近寄って、つんつんと突付くけど、反応はない。前から調子が悪かったけど、今急に壊れなくても……。
「あ、他の部屋行く?」
「いいよ、きっと大丈夫」
約束したから。兄が約束を破ったことは、今までない。
ベッドに戻って、乱れていたシーツの上にそのまま腰掛けた。
夜になっても、テレビは不機嫌なままだった。白い部屋を照らす柔らかな月光をぼんやりと眺めたまま、いつの間に眠りについたのだろう。
朝、枕もとに気を利かせて置いてあった新聞には、私に勇気を与えてくれる、兄の姿があった。
――あとがき
あーもう、イメージと違うんだよ! と、いきなりこんなのから始めると、読んで下さった方々が引きそうなので、どうしよう。
お久しぶりな楓です、こんにちは。
オープン前は、一週間に一度は更新しようと思っていたのに、全然予定通りになりませんねぇ。
さて今回は、何かの雑誌の読みきりマンガを読んでいて、ふと「甲子園だ!」と思い立ち、書いて見ました。
主人公(ヒロイン?)は病弱少女のつもりで、手術に望むのに兄が勇気を〜以下略ってコンセプトでした。
でも、最後が盛り上がってない気がするから、また似たようなの書いてリベンジしたいね〜?
では、できるだけまた近いうちに。
2004年12月29日 桜月楓
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