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灰色の雨音3


 私の思い出に残っている中の先輩は、いつも雨の中だった。
 始めてあったあの時――先輩は雨宿りをしていた私に傘を差し出してくれた。信じられなかった……こんなことをする人、本当にいるなんて思ってもいなかったから。濃紺の大きな傘。なかなか傘を受け取らない私に強引に傘を持たせると、先輩は雨の中へと飛び出していった。
「覚えています?」
「はは、覚えてないなー」
 同じ傘に入り、私が先輩とはじめて会った時の話をしたけど、やっぱり先輩は覚えていなかった。ちょっと残念。カバンを両手でぎゅっと抱きしめ、私は小さくためいきをはいた。
 信号機が赤から青に変わる。同時に傘の群も動き出す。私たちも流されるように歩き出した。
「……先輩と一緒にいるときって、いつも雨ですね」
「俺から言えば、おまえと一緒にいるときはいつも雨だよ」
 先輩は苦笑しながら傘を少し上げて葉桜を見つめた。目をそっと細め、愛しそうに、そしてどこか寂しそうに……。
 私も先輩にならって、桜を見つめた。二年とちょっと前、私はあの桜を見ながら入学してきたんだっけ。そう思って見ると、なんだか懐かしいような気がして……きっと先輩と同じようにあの桜を見ているんだと思う。
「もう直ぐお前も卒業だな」
「はい……」
 そっか……先輩は自分の卒業式を思い出してるのか。
「おまえと付き合い出してからもう直ぐ一年だな。色々な事があったな」
「はい」
 先輩はそっと歩き出した。私もそれに合わせて歩き出す。
「はぁ……そう言えばおまえは覚えていないんだったよな」
「何をです?」
「俺たちがはじめて会った時のことだよ」
「……え?」
 突然の先輩の言葉に私は思わず足を止めた。遅れた私に先輩が慌てて傘を差し出しながら数歩戻る。私も慌てて謝り、再び歩みを進めた。
 先輩は何か言いにくそうに鼻の頭をかいて、そっぽを向いた。私はただ先輩の顔を見上げ、彼の言葉を待つ。
「…………」
「…………」
 ゆっくりと静かな時間が流れる。二人とも無言のまま歩いていき、いつも分かれる丁字路に立った。
 先輩はそっと微笑むと、傘を私の手に持たせてくれた。そして自分の傘を開く。
「じゃあ、またな。多分金曜の部活にまた顔を出すよ」
「あ、先輩……」
 去ろうとする先輩を咄嗟に呼び止めた。先輩のベージュの傘が振り返る。
「あの……えっと、さっきのって……」
 先輩は苦笑して、私のまん前に立った。そして、今来た道を振り返る。
「入学式の時、ベージュの傘を差してこの道を走ってただろ」
「あ! もしかして……」
「あの時がはじめて俺たちが会った時だよ。いきなり背後から体当たりされるとは思ってもみなかったよ」
 先輩は笑いながら手を伸ばし、私の髪をクシャシャとかき回すように頭を撫でてきた。
 私はただ顔が真っ赤になっているんだろ。顔が熱い。先輩の靴先しか見れなくなってしまった。
「まあ、いい思い出だろ?」
「うー……」
 うめいて反論するが、先輩は再び髪を乱すように頭をなでると、じゃあまたな、と言って去っていった。
 私はその後ろ姿をキッとにらみつけると、駆け出した。見る見るうちに先輩の背中が近づいて来て――




  ――あとがき

 先輩の背中が近づいてきて、そのまま『どず!』と音を立てて突き刺さる刃! とはなりませんので安心を? かえでです。
 構想時間一分と書きながら。書き上げるまでの時間一時間ちょっと。
 はい、思いっきり間に合わせでごめんなさい!
 いやー、久々にこの二人を書きたくなったのですよ。今までは読んでいて恥ずかしくて転げ回ってもらえるような二人を書こうとしていました。ですが、今回は今まで以上に読んでいて恥ずかしくはないはず?
 まあ、コンセプトから外れていますがリハビリということで……(何
 魂(睡眠時間)削って小説書いていますので、これからしばらくは週一くらいで更新できそうです。まあ、予定は未定なので確約はできませんが(ぇ
 では、また近いうちに。
 って、前回の更新これと同じ終わりで半年以上前じゃん……(マテ

  2005年9月27日 桜月楓

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