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青い香り


「あぁ、クソ…何だこのモントリオール議定書ってやつは」
 俺は頭を掻き毟りながらプリントをめくっていく。どこにも見当たらない。そんなはずは無いともう一度見直すが、どこにもなかった……。
「普段授業に出てないから分かんないのよ」
「うるせぇ、授業なんて出ないでもプリントさえあればレポートくらいどうにでもなるんだよッ!」
 エリが溜息交じりに呟くのを俺は聞き逃さなかった。椅子をクルリと半回転させて言い返す。
 エリはポニーテールを揺らしながらゲームに夢中になっていた。俺の言葉なんて聞いてもいない。体を左右に揺らしながら頑張るが、エリの操るGT−Rは後続車にドンドンと抜かれていく。もしかして周回遅れじゃないか?
「ハンドル捌きがまだまだ甘いな」
 フフフンと鼻で笑ってみせる。目標タイム以内にチェックポイントを通過できなかったエリのGT−Rはいくらアクセルを踏んでも失速して行く。そして画面いっぱいに「コンティニュー YES・NO」の文字が現れる。
 エリは「YES」を選択すると、俺に無言でコントローラーを突き出してきた。レポート中は遊ぶなと言っていながら、自分から誘うなよ。俺は苦笑しながらコントローラーを受け取った。
 シグナルが赤く点灯する。舌なめずりし、俺は目を細めた。エリの視線が俺に突き刺さる。無言のプレッシャー――『私にあんなこと言ったんだ、失敗しないわよね』
 シグナルが青くなる前に思わずアクセルを踏んでしまった。舌打ちするがもう遅い。
 タイヤが空回りする間に、次々と前方の車が発進していく。最後尾の俺は慌てて操作して最初のコーナーで二台追い抜いた。その調子でどんどん前方の車を抜き去る。
 最初につまずいた以外はほとんどミスしなかった。一度トップに立ったら後は差を広げるだけだ。
「うぅぅぅ……」
「これくらい出来なくちゃな」
 コントローラーをエリに返そうとするが、彼女は受け取らない。そっぽを向いた。コントローラーを受け取る代わりにゲーム本体の電源を落とす。
「だめね、やっぱり車は運転するものじゃないよ。助手席に座ってるものだね」
 真顔で言い切る。俺は思わず笑ってしまった。
「おまえの事を助手席に乗せてくれるような野郎がいるもんか」
「結構いるよ?」
 俺がからかうように言うと、あっさりとエリが返してくる。
「マジか!?」
 さっきまで余裕をかましていたが、思わず身を乗り出して聞き返してしまった。エリの顔に俺の顔がつきそうなほど接近する。エリは思わず身を引いていた。別に嫌そうな顔をしているわけではないが――ないと思いたい。
「悪い」
「ん、別にいいよ」
 エリは大きく溜息を吐くと、両手を後ろに突いて天井を仰いだ。エリが先程までの明るい雰囲気から突然変わってしまったので、俺は戸惑った。口を開きかけ…言葉が見つからずに口を噤む。
 沈黙と停滞の刻が二人の間に流れる。
「実はね……」
 言いにくそうにエリ。視線は俺と合わせようとしない。
 鼓動が高まった。嫌な汗が吹き出てくる。
「この前、セイジに告白された」
「…………」
「まぁ、断わったんだけどね」
 俺は何て答えたらいいのか分からなかった。エリから床に視線を外してしまう。彼女はようやく俺に視線を向けてきたが、俺はうつむいたままだ。
 エリがそっと寄り添ってくる。
 肌がそっと触れ合う。一瞬エリが震えたと思うと直ぐに離れていく。しばらくして、先程よりももっと俺に密着してきた。
「私の居場所はここだからね」
 シャンプーの香りが俺のことをくすぐる。俺はエリの事をそっと抱きしめると、イヤな鼓動の高まりは消えていった。
「貴方が離れていくまで私はこのままだから……」




  あとがき――

 ごめん…何か変な妄想しながら書いていました……。
 今回のテーマは「有意義な休日」です。テーマは相棒(?)の尾形様より頂きました。
 ところで、今回書いたカップルは何をやってるんだろ……。てか、私は今回何を書きたかったんだろう……。何か色々失敗してる気がします。

 話し変わって、みなさんにとって「有意義な休日」ってどんな休日ですか?
 一日中何も気にせず小説を書けて、会いたい時に好きな人と会えれば私にとって最高な休日ですね。有意義じゃなくて最高になっちゃった……。
 有意義な休日、何か難しい><。

  2004年7月15日 桜月楓

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