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茜色のツバメ
――早く終わるといいね。
『あぁ、そうだな……』
――頑張ってね……。絶対…絶対戻ってきてよ。
『無論だ。おぬしを置いて散れぬ』
刃が欠けてボロボロになった刀を杖のように突き、彼はススキの広がる草原を一人歩く。
彼が通った後のススキが朱に染まっていく。彼は肩に、足に矢を突き刺したまま歩いていた。
仲間は…もういない。敵と戦い、散っていった。ある者は敵の手にかかり、ある者は勝てぬと見て自らの腹を切り、そして彼は…一人生き残った。
「茜……」
彼の目に映るのはこのススキ野か、それとも過去の情景か。
この野を越え、川を越えねば彼の住む家は見えてこない。しかし、彼は間違えなく娘の姿を見ていた。
「すまぬ…茜……」
俯く様に頭をたれ、彼は呟いた。もう一度顔をあげたときには、娘の姿は幻のように消えていた……。
重い足取りで、一歩ずつ…歩いていく。どれだけ進めるかは、もはや分からない。それでも進まねばならぬは、過去との約束のため。
霞む視界で空を仰ぐ。
茜色の空に一羽、季節外れのツバメが飛んでいた。
仲間とはぐれたのか、何かを探しているのか、淋しそうに一羽飛んでいる。
「……お主も、まだ、行けぬか」
愛しそうに、淋しそうに呟き、彼は地上に視線を戻した。
先程まで彼の後をついてきていた朱色ススキは、彼を通り越していた。
朱色の光がススキと交わり、奇麗な茜色の大地を一面に作り出す。
一歩、彼が足を踏み出す。しかし、力が入らない。片膝を地面に突いた。刀に寄りかかるようにして前方を見据える。
視線より高い、茜色のススキが彼の視線をさえぎった。
『まだ…まだ……』
――ごめんね…私がおとんより先に……。
――今度の春もおとんと一緒にあの桜をもう一度見たかったな……。
――あの桜が見える場所に…お願い……。
「まだ居るのか」
彼の近くをツバメが横切った。
偶然かも知れない。しかし、このツバメも彼と同じなのだ。行くはずの場所に行かず、何かを求める。
刀はまだ折れていない。何とか立つ事はできる。
乾いた血を拭い剥がし、彼は再び立ち上がった。
蒼白な笑みを浮べ、歩き出す。もし自らの命尽きたとしても、歩き続けるのだろう。求める場所に辿り着くまで。
「桜の見える季節まで…お主もいられると良いの」
あとがき――
何だろう。イメージはあるんだ。確固としたイメージはあるんだよ。
孤高の侍。死んだ娘との約束のためだけに生きる。しかし、世は戦国の時代。彼はやがて戦場に立つ事となった。彼の所属する隊は、偶然敵と遭遇する。彼の仲間は全滅。自らの将も敵に討たれた。彼は何とか生き残ったが、もはや残りの命は短い。しかし、娘との「桜を来年も一緒に見よう」という約束のために娘の眠る場所に向かって歩きだす。だが、やがてその命尽き、ヴァルキリーが迎えに来る。
ん? 何か最後が可笑しかったって?
いやね、数日前、何故かヴァルキリープロファイルをやっていまして。完全に影響を受けました。久々にやると面白いね!
今回の文章分かり難い上に、書き直す気が起きないといった、ダメな状態なんですよ。文章が下手なのはいつもの事だけど、書き直す気力が一切起きないのはダメな状態ですね。
そいや、ツバメって夏の鳥なんだってね。書き終わってから知ったよ。
もうイヤだ……色々と……。
2004年7月19日
超短編小説
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