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灰色の雨音2
気が付けば、六時を回っていた。外で奏でられる甘く穏やかな音色と共演し始めてから、既に二時間は過ぎている。部活動は終わっていなくちゃいけない時間。
「もうこんな時間……」
呟きながら慌てて演奏を止めると、
「もう終わり?」
「え、先輩……」
残念そうに、でも少し意地の悪い声がかけられた。突然の事に、トクトク、と鼓動が高まる。
振り返った先には、先輩の姿。音楽室の最前列と最後尾。先輩は教室の後ろにある扉に背を預けていた。
どこからか分からないけれど、私の演奏を今まで聞いていたみたいだ。思わず、顔が赤くなる。
視線が合うと、片手を軽く上げて挨拶された。慌てて挨拶を返そうとして、ピアノに背中をぶつけてしまった。先輩が苦笑する。
急いで片付けを済まし、ピアノにカバーまですると、譜面を胸に抱いて先輩の許へと小走りに進んだ。
「転ぶなよ」
「あ、この前のはたまたまですよ」
少し拗ねて見せた。先輩は私のその様子を見ると微笑む。
扉を開けて先導するように教室を後にする先輩。まるでエスコートされているみたい。そんな不謹慎な言葉が頭に浮かぶ。
カギをかけると、先輩とならんだ。
「すみません、お待たせして」
「いいよ、初めて演奏している姿を見れたしね」
俯く私の髪をクシャ、と撫で回して、先輩は優しく言ってくれた。
「…………」
どうしよう、何でだか顔が熱い。
今まで一度もピアノを弾く姿を見せなかったのは、私の特別な世界にご招待するにはまだ早いかな、て思っていたから。
でも、今日ならよかったかも。
一階まで降りて、昇降口に向かう途中。先輩とその奥に浮かぶ窓越しの雨を見ながら、そんな事を考えていた。
「ん、どうしたんだ? うれしい事でもあったか?」
「ぇ?」
顔を上げると、先輩と視線が絡まった。先輩がちょっと気恥ずかしげに顔をそむけた。私も……同じ。
チラッと先輩を盗み見ると、また視線が合った。
「ぁ……」
それだけで、その…笑みが零れる。
昇降口で靴に履き替えるために、ちょっとだけのお別れ。
……んー、ちょっとだけ甘えたいな。
先輩が先に靴に履き替え、外でカサを差して待っている。今日は、この前と違って白っぽいカサ。
――ちょっとだけ甘えちゃってもいいよね?
カサを差さずに外へ出て、先輩の世界に、思いきって、おずおずと入り込んだ。
「…………」
先輩はちょっとだけ驚いていたけど、私を受け入れてくれた。
――あとがき
書きあがったのは、実はオープンの数日前。修正している今は、11月26日。
かなりの期間、間を空けてしまった理由は…まぁ、色々と。
受験(推薦?)に合格しましたー! 来年から専門学校に行きます。
そして最近、長編を書いています。そっちの公開はもうちょっと掛かりそうですけれど……。
なので、昔に書いたものを見直してちょこっと修正して繋ぎにしちゃいました。
今回はそんな作品。
手元に残っている構成とかから見ると、「夕暮れの音楽室」を書きたかったらしいですね?
まぁ、書き終わったのが大分前で、修正だけ今している感じなので何を書けばいいのやら。
とりあえず、オープンしてからはじめての更新までかなりの間が空いてしまい、せっかく見に来てくださった方々、申し訳ありませんでした。
次はできるだけ……できるだけ? 早くアップします。
2004年11月26日 桜月楓
超短編小説
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